歌舞伎湯の坂巡り
さっぱりした後で、訪れてみたいのは、真珠院からもう一本西側にある三百坂。思い出すのは、手塚治虫の歴史漫画「陽だまりの樹」の冒頭。三百坂を主君の乗った駕籠を追って、ハアハアと息をはずませながら全力で駆け上がる武士たち。かつてこの坂を下った先には松平播磨守のお屋敷があり、江戸城へ登城する際に、新入りの武士を鍛えるために、従者たちにこの坂を毎朝全力で駆け上がらせた。主君に追いつけなかった者には罰金として三百文を支払わせたのが名の由来。それほどきつそうな坂には見えないが、江戸のサラリーマン武士が背広ならぬ裃に身を包み、通勤に汗して社長に罰金までとられる姿を想像して苦笑。
伝通院山門から右に千川通り方面に下るのは、善光寺坂。坂上の歩道のまん中に椋の老木が残るが、澤蔵司という修行僧の魂を宿すので、切ってはならぬとは有名な話。